きしむ船体、軋む心
観測船「しらなみ」に一週間乗った。初めての長期乗船だった。船はよく軋む。金属と金属が擦れ、溶接部が唸り、係留索が鳴る。最初の二晩は金属の悲鳴に囲まれて眠れなかった。陸の静けさが恋しかった。
三日目、機関長に愚痴ったら笑われた。「軋まない船の方が怖いよ。音は船の健康診断だ。船乗りは耳で船に乗る」。それから軋みの一つ一つに説明をつけてもらった。これは温度差、これは波長とのぶつかり、これは単なる年季。名前がつくと、悲鳴は寝息に変わった。
最終日、深海ブイの回収作業で、海底から上がってくる音を初めて生で聴いた。全てが報われた。あの音を聴くために、私はこの研究室に来たのだと思う。(七瀬)