汐見台工科大学 音響情報学研究室
Aihara Laboratory, Shiomidai Institute of Technology

うみやまのあいだ、音のあいだ

2020-08-21

夏合宿で山にこもった。海の研究室が山に行くのは毎年恒例で、新入りは必ず「なぜ山?」と訊く。答え: 静かな場所でしか聞こえない音があるからだ。

標高千mの夜、車の音も人の声も絶えた尾根で、耳を澄ます訓練をする。最初の10分は「何も聞こえない」と皆が言う。30分すると風の層が聞き分けられるようになる。1時間で、谷を渡る虫の羽音の方角が分かるようになる。耳は、静けさの中でだけ研げる刃物だ。

無響室よりも深い静けさが、山にはある。無響室の静けさは「音を消した」静けさで、山のそれは「音がまだ来ていない」静けさだ。似ているようで、耳の澄み方がまるで違う。理屈は今度、論文にする。今年の合宿の飯当番は相原先生で、カレーが三日続いた。それだけが不満である。(七瀬)

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